「ニュージーランド乱射事件犯人とソーシャルメディア 殺人がミーム」ニューヨーク・タイムズ(英字新聞)を読む
3月15日金曜日のニュージーランドのクライストチャーチでのモスク乱射事件で、少なくとも50人の犠牲者が出ているとしています。
28歳のブレントン・ハリソン・タラント容疑者は2つのモスクで自動小銃を乱射し運転しながら通行人にも発砲しつつ、その間ビデオカメラでフェイスブックにライブ中継していたとします。
事件前に流した彼自身の宣言によると、アメリカ政治に関心がありソーシャルメディアを通して、特に10代のアメリカ人視聴者を相手にビデオゲーム等のチャンネルで、“新たなる白人アイデンティティーと共通の目的” を訴えたかったとしています。
(米国の)”社会・文化・政治・人種的亀裂を増幅させ”、”人種のるつぼという幻想“を壊すのが目的だとし、銃を使う事によってより注目が集められるのだと述べています。
彼は、2017年の1ヶ月間の欧州旅行中に、スウェーデンのストックホルムでのウズベキスタン人によるトラックによるテロ(5人の犠牲者)や、フランスで反移民政策を掲げたマリン・ル・ペン氏がマクロン氏に大統領選で破れた事に憤慨し過激化したと述べています。
“激しい怒りと息苦しい絶望感“に襲われ、その時に自身が変わったとの事です。
タラント氏が白人至上主義を掲げ、トランプ大統領を支持しているとの事で、NY Times ではトランプ氏が極右勢力の台頭や人種差別を煽っているとの批判も載せています。
トランプ大統領が、かつて欧州のファシズムで使われた方法を自身の政治的人気増進に利用しているとの事です。反対派に関する嘘と愛国心に訴えた暴力の奨励をしているとの事です。(記者に暴力をふるって刑を受けた議員を褒め称えたりする行動等が紹介されています。) (https://nyti.ms/2FjS7RW)
記事では、大量殺人犯達が過去の犯罪者達の記録を塗り替えようとする行動と同じで、タラント氏がソーシャルメディアを使ってネット上のファンを増やそうとして、新たなレベルへ突入したと心理学者の見解を紹介しています。
Massacre Suspect Traveled the World but Lived on the Internet
大量殺人容疑者は世界を旅したが、頭はインターネットの中にあった。
Mr. Tarrant now appears to have become the first accused mass murderer to conceive of the killing itself as a meme; it seems he was both inspired by the world of social media and performing for it, hoping his video, images and text would go viral.
タラント氏はインターネットの“ミーム”(映像パターン・主題) に殺人自体を選んだ最初の大量殺人者となったようだ。彼は、ソーシャルメディアの世界に魅せられ、そこで演じ、自分の映像や画像、文章等が広がることを望んでいたようだ。
“Terrorism is the propaganda of the deed, and the terrorist is always as interested in his audience as his victim,” said Reid Meloy, a forensic psychologist and consultant to the Federal Bureau of Investigation, paraphrasing the 19th-century Russian anarchist Mikhail Bakunin.
“テロリズムは行為を伴ったプロパガンダです。テロリストはいつも、標的になる人々と同じくらい視聴者へも関心があるのです。” 法医心理学者でFBIへのコンサルタントであるリード・マロイ氏は言う。19世紀のロシア人無政府主義者ミカエル・バクニンの言葉を言い換えて言っている。
“But social media makes this vector much more powerful,” Dr. Meloy said. “We become host to the virus, and we accelerate its spread.”
“しかし、ソーシャルメディアがその度合を過度に上げ、影響力をより力強くしているのです。” マロイ博士は言う。“我々自身がウイルスの保菌者となり、その拡散を速めているのです。”
語彙・語法・類語・文法
Massacre 大量虐殺 = slaughter mass murder
Suspect 容疑者 culprit 犯人 criminal 犯罪者
Travel 移動一般 旅行 Trip 旅行 移動一般 tour 複数の箇所を巡ること journey 長時間の旅 excursion 短時間の旅・遠足 expedition 探検
On the internet インターネット上で (住む・暮らす)
Appear to ~ のように見える・のようだ = seem to / look to
Accused ~ 容疑の
Mass 大量 murderer 殺人者
Conceive of ~ を考える 思いつく
The killing itself 殺す事そのもの 暴力や殺人の様子をソーシャルメディアに流す例自体はアメリカで出ていると紹介している。
Meme ミーム ネットで広く共有されるメッセージの籠もったビデオや画像・テキストや同じパターンの作品等
Both ソーシャルメディアに魅せられたことと、そこで演じること
Inspire ~ ひらめきや影響を与える 鼓舞する inspiration ひらめき 発想
Hoping ~ を望みながら
Viral オンライン上で急に大きく広がる go viral オンライン上で広がる viral ウイルス性の
Deed行為・行動 = action
Audience 観衆 = fans
Victim 犠牲者
Forensic 法医学の forensic science 法医学
Psychologist 心理学者 psychiatrist 精神科医 therapist / counselor 心理カウンセラーや精神科医
The Federal Bureau of Investigation 米国連邦捜査局
Paraphrase ~ を言い直す 言葉を置き換えて言う
Vector ベクトル その方向への力
Host to the virus そのウイルスへのホスト・保菌者
Accelerate ~ を加速させる・する
Spread 拡散 拡散させる・する
引用:2019/3/15 NY Times Asia Pacific. Massacre Suspect Traveled the World but Lived on the Internet から抜粋。