「フェイスブック(Facebook) 共同創始者は語る」ニューヨーク・タイムズ(英字新聞)を読む
マーク・ザッカーバーグ氏の大学時代の寮のルームメイトでフェイスブック共同創始者のクリス・ヒューズ氏による批判的長編エッセイです。彼は、2007年にフェイスブックを離れ、米国で著作・ジャーナリズム・社会活動家として活躍しています。
ヒューズ氏によると、ザッカーバーグ氏が会社の持つ巨大な力に魅せられてしまい、他人の意見にも耳を貸せなくなり、意図せずして市場独占の怪物を作り出し、技術の進歩や競争の芽を摘んでしまったとしています。
新しい形態のソーシャルメディアが出ても次々に買収したり、相手の技術をコピーしたりして、競争できなくさせ、力づくで市場から葬り去ってきたとの事です。インスタグラムやワッツアップの買収以後、現在世界の80%以上のソーシャルメディア収益がフェイスブックに集まっているとの事です。
先月、数千・数百万のユーザーのパスワードがテキストファイルに保存されて社員がいつでも見られる状態にあったというニュースをもみ消そうとした件や、政治的なメッセージ等をトップの少数(又は一人)が恣意的に操作できるような状態も紹介し、フェイスブックが過度の寡占にあるとしています。
個人情報保護を優先するというザッカーバーグ氏の度重なる国会証言とは裏腹に、今でも消費者の知らないところで個人情報が使われていたり、50億ドルの罰金があっても、巨大なフェイスブックにとっては違反をして得る300億ドルの収益増があるので痛みは感じないとしています。
過去に米国政府がIBMのコンピューター市場の独占やマイクロソフトのインターネットの独占の動きを止めようとして、完全ではなかったにせよそれがその後の開放的な市場へ貢献したとしています。また、政府の寡占抑制の努力が無ければiPhoneやノートパソコンは無かったかもしれないとしています。
AT&Tが1950年代に独禁法適用によって拡大が制限されたお蔭でコンピューターの技術革新が進み、スタンダード・オイル解体後の個々の企業達が結果として何倍もの収益をあげたり等、独占が少ない時は経済界・社会全体の利益となるとのことです。
しかし、1970・80年代から”自由”市場の名の下に大企業の独占が促され市場の進歩や成長が阻まれ富の集中が進み、一般消費者はその犠牲者となっているとしています。
ヒューズ氏は、食品や薬品に官庁の規制や監督があるように、ソーシャルメディアに対しても、新しい政府機関や独占禁止法の活性化・改革を進めるべきだとしています。
手遅れになる前にフェイスブックをインスタグラム等の子会社から切り離して巨大な寡占から複数の競争し合う企業群へ変えるべきだとしています。個人情報保護の強化や、言論の自由とソーシャルメディア企業の責任等の議論もそうした中で進められるとしています。
It’s Time to Break Up Facebook
フェイスブックを解体すべき時
We are a nation with a tradition of reining in monopolies, no matter how well intentioned the leaders of these companies may be. Mark’s power is unprecedented and un-American.
It is time to break up Facebook.
アメリカは、企業のリーダー達がどのような健全な意図にあったとしても、寡占は抑制し治めてきた国家である。マークがフェイスブックを通して持つ力は前例のない巨大なもので、アメリカの精神に反するものである。フェイスブックを(子会社と離れさせて)解体する時である。
America was built on the idea that power should not be concentrated in any one person, because we are all fallible. That’s why the founders created a system of checks and balances.
アメリカは権力が一人の人間に集中するべきではないという精神のもとに建てられた。なぜなら人は皆間違いを犯す存在だからだ。だから、建国者達は力の抑制と均衡のシステムをつくった。
This explains why, even during the annus horribilis of 2018, Facebook’s earnings per share increased by an astounding 40 percent compared with the year before.
(フェイスブックがあまりにも力を持ち過度の寡占となったので、) フェイスブックが政治的に利用された2018年のおぞましい年にさえ、一株につく収益は前年に比べて驚愕の40%増となった。
This movement of public servants, scholars and activists deserves our support. Mark Zuckerberg cannot fix Facebook, but our government can.
フェイスブックに対して独禁法を適用しようとする公僕(政治家)や、学者、活動家達を今こそ支援すべきである。マーク・ザッカーバーグ1人ではフェイスブックを直すことはできない。しかし政府ならできる。
語彙・語法・類語・文法
It’s time to ~ する時がきた。
Break up ~ を壊す 細かくする
Tradition 伝統 = convention
Rein in ~ を制御する = control
Monopoly 単体の寡占 trust / cartel 寡占(の企業体・群)
No matter how ~ いくら~でも
Well intentioned よかれと思ってやる意識 intention 意図
Power 力 権力 影響力
Unprecedented かつて無い un 無い + precedent 前例 + ed
Concentrate 集中する・させる
Fallible 間違いを犯す infallible 全知全能
That’s (the reason) why ~ だから〜である
Founders 建国者達 the Founding Fathers 独立宣言や憲法をつくった人達
Checks and balances 抑制と均衡
Explain ~ を説明する describe ~ を叙述する
Annus horribilis 酷い年 フェイスブックの個人情報がケンブリッジアナリティカによってトランプ選挙運動に使われたり、ロシア諜報機関によるデマや右翼的な陰謀説等、トランプ支持拡大へフェイスブックが寄与したとされている。
Earnings per share 一株につく会社の利益
Increase 増える decrease 減る
By 40 percent 40%の率で
Astounding 驚かすような astound ~ を驚かす
Compared compare A with / and B AとBを比べる with / to ~ と比べて
Movement (社会的)運動
Public servant 公僕
Scholar 学者
Activist 活動家
Deserve ~ に値する
引用:2019/5/10 NY Times. 2019/5/9 It’s Time to Break Up Facebook by Chris Hughes から抜粋。