英語ーひでさん

英語 ひでさん

NY Times (英字新聞)で日本・世界を読む

「デンマークの高い就業率と生活満足度、経済的成功の裏には」ニューヨーク・タイムズで英語を勉強する

NY Times Opinion から、米国のノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンデンマーク旅行中にデンマーク経済史と成功を簡潔に書いています。

Notes on a Butter Republic
バター共和国についてひとこと

During the creation of the first global economy, the one made possible by railroads, steamships, and telegraphs, the world seemed to bifurcate into industrial nations and the agricultural raw/material producers who catered to them. And the agricultural nations, even if they grew rich at first – e.g., Argentina – seemingly ended up getting much the worse of the deal, turning into banana republics crippled economically and politically by their role.
鉄道や、蒸気船、電報などが要素となって、最初の世界経済の網が形成された時期に、世界は産業国家とそれらに農産物や鉱物等を提供する生産者国家とに分かれた。そして、例えばアルゼンチンのように、最初は成長したとしても、結局、農業国家はとても分の悪い結果となり、単一作物に頼る”バナナ共和国”として経済的にも政治的にも結局歴史上弱い立場に追いやられた。

But Denmark became, not a banana republic, but a butter republic.
しかし、デンマークは”バナナ共和国”とはならならずに、”バター共和国“となり(成功した。)

Denmark, where tax receipts are 46 percent of GDP compared with 26 percent in the U.S., is arguably the most social-democratic country in the world. According to conservative doctrine, the combination of high taxes and aid to “takers” must really destroy incentives both to create jobs and to take them in any case. So Denmark must suffer from mass unemployment, right?
デンマークは、米国の26%に比べ、GDPの46%が税金として使われ、世界でも議論の余地なく最も社会民主主義の国である。米国の保守派の信条から見れば、高い税と“働かずに福祉を受け取るだけの人”への生活補助のコンビネーションは、まさに、新しい仕事を生み出したりする会社やそこで働いたりする労働者の意欲を削ぎ取るに違いない、となる。だから、デンマークも失業の蔓延に喘いでいるに違いない。と思うでしょ?

Ahem:
“エヘンッ!”(“ちょっと下のグラフを見て下さい。”)

Yep, Danish adults are more likely to be employed than their U.S. counterparts. They work somewhat shorter hours, although that may well be a welfare-improving choice. But what Denmark shows is that you can run a welfare state far more generous than we do – beyond the wildest dreams of U.S. progressives – and still have a highly successful economy.
(グラフをみればわかるように) その通り、デンマークの大人は米国の同じ条件にいる人達よりも就職率が高い。そして彼らは米国人よりも幾分か勤務時間が短い。もっともこれは福祉をさらに発展させる選択ではあるが。しかし、デンマークは我々米国でやっているよりも、遥かに寛大な福祉国家を運営することが可能であるという事を示している。これは、米国の革新派が“現実にはありえないだろうけれども”と夢見る理想さえ越えたところにある。そして、同時に経済的にもとても成功している。

Indeed, while GDP per capita in Denmark is lower than in the U.S. – basically because of shorter work hours – life satisfaction is notably higher.
実際、人口一人あたりのGDPは米国よりもデンマークの方が低いが、これは基本的に労働時間の短さからくるものであり、デンマークの生活満足度は米国よりも極めて高い。

語彙・語法・説明(最下段)
Note on ~ についてのメモ・一言・情報
Butter Republic バター共和国 バター生産で歴史的に農業国として成功したデンマークを称している。
Creation 創造 create ~をつくる
Global 世界的な globe 地球
During the creation of the first global economy 具体的な表示は無いが、19世紀後半から20世紀初頭。農業国アルゼンチンは同時期に隆盛を極めその後低落した。
One (that was) made possible by ~ によって可能となった possible 可能
Railroad 鉄道
Steamship 蒸気船
Telegraph 電報
Seem to be ~ のように見える 〜であるということらしい seemingly どうやら 〜のようである
Bifurcate A into ~ Aを2つに分ける
Industrial nation 産業国家
Agricultural 農業の
Raw 生の 加工前の鉱物・農産物等  processed 加工された
Material 原料 材料
Producer 生産者 product 製品
Cater to / for ~ へ(食事)サービス等を提供する
Grow rich お金持ちに成長する
At first  最初は  at last 最後に やっと
e.g., 例えば i.e. すなわち
End up ~ ing  結局~ することになる
Get much the worse of the deal  その取引や取り決めにおいてずっと損くじを引く
Turn into ~ へ変化する
Banana republic バナナ共和国 単一作物等に頼る不安定で経済変動に脆い国
Cripple ~ をかたわにする 不自由にさせる 弱める
Economically 経済的に
Politically 政治的に
By their role それらの国が農業国家という役割を担うことによって(世界経済で産業国に遅れをとる。)
Tax receipts 政府によって徴収された税  またはその受け取り証明書  receipt レシート
Arguably 議論の余地なく もっともな argue ~ と主張する
Social democratic 社会民主主義  democracy 民主主義
Conservative doctrine 米国の保守派のドクトリン・信条 conservative 保守派(の)
Combination 組み合わせ コンビ
Aid to ~ へ対する援助 aide 助手
Taker 取る人   “働かずに”生活補助や保険サービスを受け取る人 。反福祉政策を唱える人達の信条の一つ。米国の革新派経済学者の間では、お金持ちへの援助と違って、費やしたお金が全て経済へ還元される景気刺激策としても支持される。
Destroy ~ 破壊する 台無しにする = ruin spoil
Incentive 意欲 〜する理由
Create jobs and take them 仕事を生み出しそれを(労働者が)とる
In any case 結局 つまるところ
Must 助動詞 ~ に違いない しなければならない
Suffer from ~ から苦しめられる  suffer + 怪我・病気 にやられる に苦しむ from ~ が付くと間接的に苦しめられている状態や長期の状態を示唆する。
Mass 大勢の
Unemployment 失業
Right? そうでしょ? Aren’t I right that you think ~ .  〜とあなたが思うであろうという、私の推測は正しいでしょ? = Aren’t I right?
Ahem エッヘン 咳をする音 記事では、デンマークと米国の就業率の推移を示したグラフを紹介している。デンマークが常に数%高い。
Danish デンマークデンマーク語 Dane デンマーク人 The Danes デンマークの人々
Likely to ~ しがちである することになる
Employ ~ を雇う employee 従業員 employer 雇用主
Counterpart  同じ状況や立場で別の場所や会社にいる人
Somewhat 幾分か 何故か
May well be ~ もっとも~である であろう 納得できる
Welfare 福祉システムや福祉サービスの内容 welfare state 福祉国家
Improve ~ を改善する 発展させる
Choice 選択
What Denmark shows is デンマークが示すものは
Run ~ を運営する = operate organize
Far more はるかに上回った
Generous 寛大な
Beyond ~ を越えて
(Never in) wildest dreams 一番突拍子もない考えや願い(でも考えつかなかった)
Progressive 改革派 革新派の人 progress 進歩 進捗
GDP per capita 人口一人あたりの総生産
Life satisfaction 生活の満足度 satisfy ~ を満足させる
Notably 目立つほど 顕著に note 気づく 述べる + able できる + ly

記事では、デンマーク第一次世界大戦前までにバターの輸出で経済が成長し、家畜の餌を米国から供給するなど国際化も進め、その繁栄をもたらした経済の主体は大企業ではなく地方の農協であるとしている。また、アジアの先進国と同じように広く行き渡った高等教育や国内の経済格差の低さが国家経済の成功の土台になっているとする。ユーロと結びついた通貨政策が金融危機の影響も受けてマクロ政策的には弱いが、ミクロの細かい政策がデンマークの成功を導いているともしている。

引用:2018/8/6 NY Times.com Opinion. Notes on a Butter Republic から抜粋。https://nyti.ms/2KutLUT